世界最大規模の新興国株投資ファンドを22年間運用している新興国投資の第一人者、マーク・モビアス氏に『選べるCFD』編集部がインタビューしました。
編集部 投資で良い結果を得る為に必要なこと、特に個人投資家の読者の皆さんへの新興国投資へのアドバイスをお聞かせいただけますか?
M.モビアス まず、投資対象を分散させることです。1つや2つではダメです。これがリスクを低減させて、良い結果を生むのです。そして、自国の市場だけに目を向けていてはいけません。単一のマーケットでは、ベストのパフォーマンスが出せないからです。グローバル投資・新興国投資が必要な理由がここにあります。
編集部 なぜ、新興国投資なのでしょう?
M.モビアス 企業の成長率が高いためです。ここで必要なのは、自分のポートフォリオを持ち、投資を適切に分散させることです。それから、短期保有では収益があがりません。5年間は持つことが大切です。
編集部 長期的な投資の方が利益率が高いということでしょうか?
M.モビアス ここでの考え方は、できるだけトレードコストを引き下げるということです。短期間に売り買いを繰り返すと、どうしても心理的に低いところで売って高いところで買ってしまうという傾向をもたらすからです。例えば、リーマンショックの時には、どんどん資金を引きあげてしまい、その後に市場が回復や伸びを示しているのに資金を投入する…そういう現象がみられました。
それから、私どもの推奨する手法、投資手段としては、毎月同じ金額をマーケットが上がったりすることがあったとしても、継続して運用していくということです。毎月同じ金額を一貫した形で運用していくということが非常に大事です。
編集部 それは、投資コストや資金効率を安定させるためでしょうか?
M.モビアス 売り買いの平均価格を担保するということです。多くの人が、あまりにも投資結果に陥っており、結局、高いところで買って、安いところで売ってしまっている。そこで、一つの規律を持った形で投資をしていく運用していくということが重要になるのです。
編集部 時間軸においても投資を分散させるわけですね?
M.モビアス 長期的な視点に立てば、毎月同額の投資であれば、売るまたは買うポイントが高かろうが低かろうが、平均的な価格での投資ができます。そうしますと市場が弱含んでいる時は、より多く購入できますし、また市場が強くなっている時は少なく購入するということになります。つまり、長期的な視点ではトータルコストが下がるのです。
このようにしてリスクを軽減することができ、また投資効率も高めることができます。
編集部 新興国投資はハイリスク、ハイリターンですが、もしも相場が予想と反対方向に動いてしまった場合の判断はどうするべきでしょうか?
M.モビアス 仮にですが、一つのポートフォリオを持っていて、非常に利益を上げているといった場合には、銘柄数を増やしていきます。私はここ1週間ばかりパニック状態のドバイに居ました。実はそういったパニックの時こそ投資機会であるわけです。パニックの状況と言うのは、情緒的に不合理な状況を生み出すからです。
私どもは価格が下がったところで買い始めたわけですが、翌日また下がってしまう。で、そこでさらに買うわけです。この行動がいかに心理的に実は難しい行動であるかということはお分かりいただけるのではないかと思います。
編集部 特に個人の投資家には、価格が下がっていく時に買うという決断は難しいですね。
M.モビアス ドバイでの事例では、事前に非常に深いリサーチを行っていたことと、この投資によるリスクはポートフォリオに対して1%に過ぎなかったのです。これが重要です。時にはリスクを取ることは非常に重要ですが、全ての卵を一つのバスケットに詰め込んではいけない、リスクを分散すべきだということです。
編集部 価格が下がっていく時に買い増すという決断が、個人投資家には難しいですね。
M.モビアス みんな人間ですから誰しも難しいのです。ただ、私はマーケットの崩壊の現場を多々経験して来ましたので、難しくても決断ができました。
編集部 個人投資家は少ない資金で自分の資産をなんとか増やそうと運用するわけですが、前向きに投資をしていく為には、何が必要ですか?
M.モビアス 第一には屋根(住む為の家)があること、そして緊急事態に備える資金があるか、病気になったりしても大丈夫かということ、それから保険に入っているか、ですね。基本的な資金を持ち合わせた上で、余裕資金で投資をするべきです。
それから気をつけていただきたいのは、金融業者が個人の状況がどうであろうが、売ろうという固い決意に基づいて販売行動、営業行動を行っているという現実です。非常に複雑な構成をもっている金融商品では構造を理解することが非常に難しくなっています。
今日の一番重要なメッセージは、読者の皆さんに、理解のできないものに対しは決して投資をしてはいけないということです。一体何に投資をしているのか、なぜ投資をするのか、そして誰に対して資産を委託しているのかということを必ず把握したうえで投資をしていくことが大切です。
編集部 とても重要なお話を伺いました。ありがとうございました。
取材・編集:選べるCFD編集部